(本記事はこちらのLooker Blogをベースに日本語で再構成したものとなります)
本記事では、単にデータを見せるためのダッシュボードではなく、真にエンドユーザーの役に立つダッシュボードを作成するための5つの原則についてご紹介します。
その原則とは以下のとおりです
ダッシュボードの “Big Idea” (目的) を見つける
ワイヤーフレームについて賛同を得る
明快にする
シンプルに保つ
フロー(流れ)を作る
最初の2つは実際のダッシュボード構築を始める前に実施するので「調査フェーズ」と定義し、後の3つは実際にダッシュボードを構築する際に考慮することなので「作成フェーズ」としたいと思います。
伝えたいことを理解することは、良いダッシュボードを構築するためのスタート地点と言えます。そのダッシュボードを作成する背景は?なぜそれが必要なんでしょう?
これらの答えを得るには、データの利用者と実際に対話するのは一番です。利用者が誰であるのか、このデータで何を達成したいのか、そしてその情報に基づいてユーザーがどんな行動をとるのか。まずはこれらを理解することが極めて重要となってきます。
例えば、ビジネス上の意思決定を行う役員層と、日々物事をスムーズに動かし続ける現場のマネージャー層ではそれぞれ異なる情報を必要とします。データの利用者となるユーザーに、ダッシュボードから何を得たいのかをしっかりとヒアリングすることは、それぞれのユーザーの目標を実現するための最初のステップとなります。
ユーザーには以下のような質問をして、詳細を掘り下げてみましょう:
ダッシュボードの要件ヒアリングについてはこちらにテンプレートがありますのでご活用ください!
上述のようなヒアリングは、最終的にダッシュボードを有用なものにすることだけではなく、ダッシュボードの作成を始める前からユーザーからある程度の賛同を得ることにも繋がります。つまり、ダッシュボードの構築に時間を費やした後で、ユーザーが要件を変更する可能性を減らすことができるということです。
ユーザーが望むものを確実に提供するには、ワイヤーフレームの作成が効果的です。ダッシュボードのワイヤーフレームでは、どの可視化パターンを使ってデータを表現するかも含め、最終的にどのように見えるかを表します。
ワイヤーフレームは一枚ペラの紙にシンプルに書きましょう。重要なのは、ダッシュボードを作成する前に、ダッシュボードがどのように表示されるかをユーザーにプレビューしてもらい、フィードバックを得て調整することです。
ダッシュボードとそのコンテンツの目的について合意をしたら、いよいよダッシュボード作成に取り掛かります。その際、冒頭にも述べた作成フェーズにおける3つの原則・「明快・シンプル・流れ」を念頭に置きましょう。
ダッシュボードのコンテンツが何を意味するのかをユーザーが確実に理解できるように、明快さを意識しましょう。
タイトル、ラベル、ノート (以下のサンプルダッシュボードの紫で囲んだ部分) をわかりやすくして、ユーザーが何を見ているのかを明確にしましょう。理想としては、ユーザーがダッシュボードの作成者にいちいち質問をしなくても、それぞれの数字・グラフが何を示しているかが分かる状態を作り上げることです。
各タイルのタイトルを分かりやすいものにし、ノートに補足説明を書く。
指標の定義
チャートの読み取り・解釈の方法
そのデータをみて取るべきアクション
ソースデータの更新頻度 等
テキストタイルを使ってダッシュボードの説明を記載する。マークダウンで関連ドキュメント・他のダッシュボード等へのリンクを貼る。
説明にはなるべくユーザーが普段使っている用語を使用する。データチームしか分からない(=問い合わせが発生する)用語を避ける。
ダッシュボードに表示される情報にはすべて目的があって然るべきです。各タイルの情報を見た後にユーザーが取るであろう / 取るべきアクションについて考えてみましょう。もしアクションに繋がらないようなものであれば、内容を見直すか、思い切って断捨離してしまいましょう。また理想としては、ユーザーが興味を持った場合により詳細にドリルダウンできるオプションも合わせて提供するようにしましょう。
以下は営業マネージャー向けのダッシュボードサンプルです。極めてシンプルな構成ですが、「自身のチームのパフォーマンスはどうか?」という質問に回答することにフォーカスして必要な情報を提供しています。画面上部ではチーム全体の予算に対する実績を、その下には個人個人の数字があり、下部では各々のミーティング予定のトレンドを確認できます。これらの情報から、どのメンバーがちゃんと戦略的に動けているのか、逆に誰がそういった戦略を必要としているのかを特定することができます。
不必要なテキストは極力省く。上記の例では、ACV・PercentageのグラフのY軸のラベルを敢えて省いています。これはタイルのタイトルからY軸の数字の意味が明らかなためです。
ひとつのダッシュボードに複数の分析シナリオを詰め込むのは避ける。例えば上記はマネージャーが見るべき情報にフォーカスしていますが、同じダッシュボードに個人 (担当者) が見るべき指標も入れ込むといったことはやめましょう。
多すぎる桁数を避ける。value_formatパラメーターで、表示される数値のフォーマットを保ちましょう。
LookML開発者の観点では、ドリルやリンクといった機能を使ってダッシュボードの範囲外の詳細情報を提供することを検討し、一つ一つのダッシュボード自体はシンプルに保つように心掛けましょう。
一般的なWebサイトのニュースをイメージしてみてしょう。大抵の場合、見出しが一番上に配置され、その後スクロールして詳細が確認できるようになっているかと思います。ダッシュボードもそれと同じで、人々が情報を読み取る順序を意識してコンテンツを配置しましょう。
以下の例では、キャンペーンのパフォーマンスセクションが一番上の見出しになっています。さらに詳細を知りたい場合はその下の利益分析セクションを見る、というように、画面を下げていくに従って情報の粒度を細かくするような配置としています。
テキストタイルを上手く使用して余白を作り、読み取るべき情報毎にセクションを分割する。できれば、各セクションは1画面に収まるように保つ。
上から下にいくに従って情報の粒度が細かくなるようにする。場合によっては別のダッシュボードに分け、ダッシュボードリンクを設置する。
タイルのサイズは標準化する。整然と並べることで見やすくする。
色を上手く利用してまとまりを作る。多くの色を使いすぎないようにする。
ダッシュボードを作成する際、漠然と多くの指標を一つのダッシュボードに盛り込むのではなく、まずは「そのダッシュボードで伝えたいことは何か?」「そのダッシュボードを元にユーザーが取るべきアクションは何か?」を明確にすることを心掛けましょう。
目的・テーマが明確になっているダッシュボードは、パッと見るだけでそれが何を意味するのか大体わかるものです。そのようなダッシュボードの作成を心がけることで、作成者が内容の説明に時間を費やしたり、エンドユーザーが適切な情報に辿り着けないといった状況を改善することできます。
ユーザーにとって真に有用なダッシュボードを整備して、誰もがデータに基づく意思決定を迅速に、簡単に、行うことができるようにしましょう!
もし、みなさんが実際にダッシュボード作成の際に意識していることがありましたら、ぜひぜひコメントにて共有ください!