データドリブンな企業文化を育むために始めるべき5つのこと

本記事は、2020年1月に投稿されたこちらのLookerブログ記事の日本語訳となります。
これまで以上にデータドリブンな組織になっていくための方法を探している皆様にとって、何かしらのヒントとなれば幸いです。
 


Getting people on board with data では、2019年に脚光を浴びた「データ文化」と「データリテラシー」という2つの用語について多く語られていますが、実際にお客様とこれらの用語に対する取り組みについて話を聞くと、(1)多くの人がデータ文化を持つべきだと感じている、しかしその一方で (2)それが何を意味するのか誰しもが理解しているわけではない、ということがわかりました。

Lookerではそれらの用語については以下のように考えています:

  • データ文化:あらゆる部門、またレベルにまたがり、データドリブンな人々で構成されるコミュニティがある。このコミュニティでは、誰もがデータを効果的に使用し、データに基づく意志決定を行い、データをクローズなものにすることなくオープンに会話をすることができる
  • データリテラシー:データを読み、理解し、またデータを元にしたコミュニケーションができる能力のこと

    これらの定義についてより深く知りたい場合は、how to build data literacy をチェック

データドリブンな文化を推進することで、従業員はデータに基づく意思決定を行えるようになり、ビジネスを正しい方向に進めることができるようになります。また洞察を得るためにボトルネックを感じることもなく、さらにはデータチームが設置したガバナンスの効いたデータ基盤のおかげで、人によってデータの定義が曖昧になるといったこともないでしょう。

ただ、データ文化を作るということは、残念ながらそれほどシンプルなことではありません。全従業員にデータリテラシーの認定試験に合格させたり、CEOに「今年はデータ文化を持つ!」と高らかに宣言させるだけでは不十分です。

以下に、組織内でデータ文化を醸成するために、これから2020年の戦略に組み込んでいただきたい5つのイニシアチブを紹介します。

1. ミッション・ステートメントに「データドリブン」や「データリテラシー」を組み込む
2. 企業内にデータギルド(コミュニティ)を作る
3. 誰もがアクセスできる企業のパフォーマンスダッシュボードを作成する
4. データ利用に関するアンケートを実施する
5. データで楽しむ!

1. ミッション・ステートメントに「データドリブン」や「データリテラシー」を組み込もう

まずはデータ戦略を企業戦略の中に取り入れましょう。「透明性」や「信頼性」といった言葉を使った一般的なミッション・ステートメントはもうやめて、実際に期待される行動を形作るための、より具体的なステートメントに置き換えましょう。

さらに部門の目標にも落とし込めるように、ミッション・ステートメントは現実的に実行可能、かつ業務に関連付けられるものにしましょう。合わせて、ガバナンスを高めるために、部門間でビジネス指標の定義について合意をするなど、共通したデータ関連の目標も作成しましょう。

つまり「透明性と信頼性のあるパートナーになることで、より多くの売上を創出する」といった具体性に欠けるステートメントではなく、「組織内の全従業員がデータに基づいた意思決定を正確かつタイムリーに行えるようにすることで、利益を10%増加させる」といったより具体的なミッション・ステートメントとなるように心がけます。

2. 企業内にデータギルド(コミュニティ)を作ろう

もし本記事を参照されている皆さま(個人)だけが「データ文化」について考えているのであれば、それはまだ企業としての「文化」とは言えません。まずは採用マネージャーに依頼してジョブディスクリプション(職務記述書)に「データドリブン」などの文言を含めるように依頼し、そのようなマインドセットを持つ人々から興味を持ってもらえるようにしましょう。また同様に重要なこととして、各部門に既に存在しているであろうData-Savvy (データに精通した)かつData-thirsty(データに飢えた)な同僚を見つけ出しましょう。

ビジネス全体でこれらのデータに精通した人々を特定したら、次にその人たちを誘って「ギルド」を構築します。大抵の場合、そのような人たちはビジネスについて深い理解を持ち、かつビジネスユーザーとの繋がりを既に持っており、さらにはデータがどのように機能するかを知っているはずです。そのため、アナリストや開発者と協力することで、彼らの部門の目的に合ったデータ基盤を構築することができるようになります。また、ギルドを組むということは、部門を横断してデータドリブンな戦略を展開する手助けをしてくれるチームを持つということにもなります。各部門におけるデータに対する意見をタイムリーに得ることにも繋がるでしょう。

Whack-a-mole anyone? (もぐらたたき?)

上記のようなデータチャンピオンを見つけることは、もぐらたたきに似ています。色んな場所に現れては鋭い質問を投げかけたり、積極的にデータツールへのアクセスを希望してしたり、はたまた彼ら自身のデータをより使いやすくするための提言をしたりしている人を目ざとく探しましょう。

ただ、せっかくそのような人たちを特定できたとしても、適切なインセンティブと機会が与えられないと、彼らは日常生活(=自身の元々の業務)に戻ってしまいます。データドリブンなコミュニティを形成するためにも彼らと積極的に関わりを持ち、あなたの支援者として協力を得られるようにしましょう。ギルドを成長させ続けるためにも、そういった活動は定期的に行うことをオススメします(得てして予期してないときにそういう人は現れるものです!)

ギルドメンバーとの協働

ギルドのメンバーと協力して、データに関する社内リソース(コンテンツ)を作成し、各チームのビジネス領域、スキルレベル、そして様々なエンゲージメントレベルに応じて共感を得られやすそうなイベントを企画します。

以下の表では、エンゲージメントレベルとテクニカルレベルに応じて有効なリソース(コンテンツ)やイベント例を紹介しています。例えば最もテクニカルレベルが高く、またエンゲージメントレベルも高い人たちにはハッカソンを、エンゲージメントレベルは高いけどテクニカルではない人たち向けにはアンバサダー(会社内のデータ大使)となってもらうためのプログラムを実施してみましょう。

3. 誰もがアクセスできる企業のパフォーマンスダッシュボードを作成しよう

企業の一員である以上、誰しも自社のパフォーマンスは気になるものです。自社の売上や利益、クライアント数といった数字は社員同士の会話のタネとなり、「データ」そのものへの抵抗感を減らすことにも役立ちます。いくつかの全社向けのダッシュボードにこのような数字を入れておくとエンドユーザーのデータへの関心を高めることできますし、究極的にはデータドリブン文化の定着化にも繋がっていきます。

データに精通していない人の目を引くためには、ダッシュボードにインパクトのある指標を設置することも重要です。基本的にバニティメトリクス※ の利用を勧めることはないのですが、目を引くための仕掛けとしてそのような指標を追加してみるのは一つの手と言えます。

※ 一見、見栄えは良いが、それ以上の洞察やアクションに結びつかない指標のこと。ユーザー数やレビューの数など。

会社のパフォーマンスダッシュボードを作成するときは、まずは意味の分かりやすいビジュアライゼーションを選択し、各タイルにはエンドユーザーが理解しやすいような説明分を付け加えるようにしましょう。ダッシュボードを作成したら、会社全体で見られるようなチャネルで紹介しましょう。例えばオフィス内の共有のディスプレイに映したり、Slackのようなチャットツールで配信したり、社内ポータルの目立つところに掲載したりしましょう。社員にとって魅力的で、業務に関わりがあり、常に最新のデータを表示するダッシュボードにすることを心がけましょう。

4. データ利用に関するアンケートを実施しよう

データプロダクトオーナーとして、自社のメンバーがどのようにデータを利用しているのか、どの程度快適に使えているのか、またゴールは何なのか、そしてそのゴールを達成できる状態にあるのかどうかを理解することは非常に重要です。ベースラインを設定することにより、年間を通じて進捗を追いかけ、ロードマップにどう優先順位を付けるべきかを見極められるようになります。このようなベースラインを確立するためには定期的にアンケートを実施すると良いでしょう。

例として、データの利用者に以下のような質問を投げかけてみましょう

  • タイムリーな意思決定を行うために必要十分なデータにアクセスできると感じていますか?
  • セルフサービスでのデータ活用を望んでいるものの、現状できていないチームはありますか?

このようなアンケートを実施するときは、まず対象者に対して意図を明確に伝える必要があります。このアンケートは社内のデータ文化の浸透に役立てるものであり、ひいては全社員の業務体験をより良いものに改善するためのものであることを明確に伝えましょう。

フィードバックを基にあなたが実施するアクションについては、常にアンケート対象者全員と共有するようにしましょう。また、あなたが実施しているイテレーション(改善のための反復活動)についても目に見えるロードマップを作成しておきましょう。あなたが実施しているアクションによって社内でどのようなインパクトがあるかを常に把握し、必要に応じてロードマップに反映できるよう、少なくとも年に3回はこのようなアンケートを取ることをオススメします。

5. データで楽しもう

普段データを使っていない人からすると、「データ」という言葉自体がとても馴染みがなく、下手すると拒否反応を起こすようなものかもしれません。が、そういった人々も、自身では気が付いていないだけで、実は日々の生活の中で当たり前にデータに基づいた意志決定をしているものです。例えば毎朝、天気予報が教えてくれる最高・最低気温に基づいてその日の服装を選んでいると思います。これも立派なデータに基づく意志決定なのです。(Lookerメンバーの中には気温に関わらず年中半袖短パンの人もいますが。。)

データに対する恐怖心を取り除けるよう、誰がみても楽しめるような指標をダッシュボードに組み込んで公開してみましょう。例えば年間のボランティア目標時間と、実際に実施したボランティア時間。例えば部門で支給したHDMIコネクターの紛失数(よくどこかしらに忘れますよね。。)。あるいは四半期毎のオフィスコーヒーの消費量トレンド、など。

またデータ文化を浸透させるための良い方法の一つとして、歩数や睡眠時間、消費カロリーなど、スマートウォッチで取得できるヘルスデータを部門間で競い合ったりすることも有効です。データを見る習慣の促進にもなりますし、データのインプットとそれを継続することの大切さを理解することにも繋がります。更には異なるデータセットがどのように可視化できるのか、また単に数字を見て終わりではなく、どう次のアクションに繋げていくかを考えられるようになります。

ちなみにLookerでは、各国オフィス・各チームのメンバー数、もうすぐ勤続アニバーサリーを迎える社員リスト、更にはペットの数が見られるダッシュボードなど、楽しいダッシュボードがいくつもあります。気になる方はお問い合わせを!

まとめ

企業内にデータ文化を醸成するということは決して簡単なことではありません。
しかし、上記なような取り組みを地道に行うことで、組織内でデータを見て次のアクションを行うという習慣が育ち、それが企業としての「データ文化」になっていくものと考えています。Lookerでは、「データ文化」を醸成していくための各種ご支援も行なっておりますので、お気軽にお近くのカスタマーサクセスマネージャーまでご相談ください!

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